いい小説って伏線の散りばめ方と回収の仕方が素晴らしい。
いつものめり込む小説といったら、そんな小説が多かった気がします。
ミステリー小説に多いんですけどね。
伏線を置かなくても素晴らしい小説というのは、色々とあるのですが、キチンと回収される小説というのは、中々ありません。
伏線を置いたはいいが、説明もなく放置。強引に回収しようとして、空回りする。
見ている読者はその辺分かるもので、「あぁこれ結構強引だな」とか「あの話はどこいったんだよ!」とか読後思ったりする時も多々あります。
今回ご紹介する『神様の定食屋』も伏線を置きながら、キッチリ回収するという小説です。
それもミステリーではなく、街の場末の定食屋が舞台の一冊
始めは面白いか半信半疑でしたが、読むほどに小説に引き込まれていきました。
あらすじ
両親を事故で失った高坂哲史は、妹とともに、定食屋「てしをや」を継ぐことになります。
ただ、この哲史という人物料理がからっきしダメな人間で、役にたちません。
料理の達人の妹に叱られてばかりで、ある時ふと立ち寄った神社で、「いっそ誰かに体を乗っ取ってもらって、料理を教えてほしい」と愚痴をこぼしたところ、なんと本当に神様が現れて、魂を憑依させられてしまった。
1話完結物が複数話入って、1冊にまとまった短編小説です。
魂を憑依させられた哲史君が、色々な魂と料理を作りながら、魂の未練を晴らしていくというストーリーなのですが、1話読むだけで小説の舞台に引き込まれます。
主人公である哲史の想い・魂達の想い・残された者達の想い・・・
『想い』を中心に展開されていき、最後に最高の終わり方をする物語です。
想いを繋ぐという重要性
伏線は、ストンと腹に落ちてキチンと回収できます。
そこは小説に譲りますが、この物語のメインテーマ『想い』について、もう少し掘り下げたいと想います。
先程主人公・魂達・残された者達と書いてきましたが、既に亡くなった方達メインの小説と言っても過言ではありません。
亡くなった方もバラエティに富んでいて、老若男女多種多様な方達が出演します。
その中でやはり涙腺がもろくなるのが若い子達。詳しくは書きませんが、この作者がこういう子達を書くと、もう涙腺待った無しになります。
そして、こういう若い子達も『想い』を持って、主人公に憑依し、残された方達に『想い』を渡して去っていきます。
原始の時代から人間というのは、一人では生きていけませんでした。
ある意味超有名なフレーズ「人という字は、人と人が支え合っている」(支え合ってない!という説もありますが、脇においときます)でも書いてある通り、何千・何万・何百万人という種の系譜のハテに私達はいる訳です。
言ってみれば、今まで生きてきた方々の『想い』を引き継いで、成り立っているのが我々。
この『想い』を次世代に繋いでいくのも、私達の重要な使命なんだなと気づかせてくれた一冊です。
無料で読みたい方は、無料版があるので立ち読み下さい。
一話でピン!ときたら、お布施してみてもいいかもしれません。
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