失敗するというのは誰にでもあることなのですが、この失敗という2文字は人によって毒にも薬にもなります。
ある人は「成功に至らない道を1本見つけただけ」と前向きにとらえたり、またある人は「これで俺の人生終わりだ」と落ち込んで一歩も動けないといった状態になったりします。
自分だけで完結する失敗であれば、どちらに転ぼうが自己責任で終わりますが、他者が関係している場合にはそうは言ってられません。
そんな医者の医療ミスや航空機事故といった他者に致命的な失敗=ミス=事件・事故に発展する事象を集めて、医療ミスが頻発する医療業界と事故率が万分の1まで落ちた航空業界を対比して、科学的に分析した1冊『失敗の科学 マシューサイド著』をご紹介します。
人は失敗を隠す
人は失敗を隠す。他人から自分を守るばかりでなく、自分自身からも守るために。
自分自身にあてはめても、昔話ですが刺さる言葉です。
恥ずかしい思い出したくない大失敗を言われるまで忘れていたり、過去の失敗を正当化してあれで良かったんだと判断していることもありました。
他者に指摘されるまで、ホントに忘れているんですよね。
所属している上長や友人・同僚でも、思い当たることがあるはずです。人は失敗を隠しがちな生き物です。
クローズドループ現象
「クローズドループ」とは、失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態を指す。
本著では「クローズドループ」の例で、医療機関をあえて指摘していますが、こういう団体は星の数ほどあります。
最近で言えば、政治団体もそうでしょう。政治家と教育機関の癒着問題に焦点が当たっていますが、ああいう話は昔もリクルート事件、昭和電工事件といった一連の疑獄事件としてあったわけです。
「クローズドループ」の場合、自浄作用が働かないので同じことの繰り返しになります。中の人達は、それを当たり前と考えているので直そうにも『正しいものを何故直すのか?』という考えなので、処置のしようがなくなります。
失敗から学ぶための二つの要素
失敗から学ぶにはふたつの要素が不可欠だということだ。1つ目はシステム。2つ目はスタッフだ。
アメリカの医療機関での成功例をあげていましたが、「クローズドループ」を脱却するには、失敗から学ぶふたつの要素が必要となります。
システム面とスタッフの意識改革です。どちらか一方を直してももう片方がダメなら、「クローズドループ」からは抜け出せません。
日本ではコンプライアンス・CSRといった言葉が叫ばれていますが、ほぼシステムを整備して、スタッフ面はおざなりという業界が多いです。
『仏作って魂入れず』という昔からのコトワザにありますが、まさしくそんな状況の業界が多く見うけられます。
業界全体に危機的な状況が訪れない限り、何もしようとしない。
今の日本の縮図を見ているようですが、水に浸かったカエルがお湯になるまで気づかず溺れないようにしたいものです。
時間は集中の度合いによって経過が変わる!?
集中力は、ある意味恐ろしい能力だ。ひとつのことに集中すると、ほかのことには一切気づけなくなる。
失敗の要素の1つに集中力があげられていました。
最近アインシュタインの相対性理論の話をTVでやっていたのですが、以下のようなことを取り上げていました
。
熱いストーブの上に手を置くと、1分が1時間に感じられる。でも、きれいな女の子と座っていると、1時間が1分に感じられる。それが、相対性です!
アインシュタイン
相対性に関して簡単に述べただけで、相対性理論とは別物ですが、極度に集中している時間も通常時と比べて相対的に早くなります。
好きな本やゲームをしている時に、気づくともうこんな時間かというのが誰にでもあるはずです。こういう時は、他が見えなくなる視野狭窄が起こりがちです。
対象が本やゲームならいいのですが、本著では患者の処置や飛行機の操縦でも起こり得ると書いています。実際、集中力し過ぎて大事故になった例も書いてありました。
集中できるのは良いことですが、時と場合によるとキモに命じておきましょう。
最後に
自身が属している業界・団体で当たり前と思われている事でも、他からみたら明らかに失敗というケースは多々あります。
日本は、「クローズドループ」状態の業界が多いので、参考に1読してみる価値は十分あります。
「人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます」
32代米国大統領 エレノア・ルーズベルト
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