子どもは何をしなくてはならないのか?
人は何のために生きるのか?
本帯部
司馬遼太郎と言えば、『竜馬がゆく』・『坂の上の雲』・『峠』といった時代小説を思い浮かべられる方が多いと思います。
確かに時代小説=司馬遼太郎というイメージがあるのですが、『街道をゆく』『人間というもの』といったエッセイ本にも力を入れてらっしゃいました。
今回は、そんな司馬遼太郎のエッセイ本『二十一世紀に生きる君たちへ』を紹介します。
二十一世紀に生きる君たちへ 内容
内容の前にこの本の対象者ですが、大人ではありません。
小学校5・6年生向けの国語教科書に書かれた1冊です。そのため、小学校高学年でも読めるように漢字にふりがなを付けたり、読めなさそうな漢字はあえてひらがなで書いていたりと創意工夫がみえます。
内容としては、表題の二十一世紀に生きる君たちへと洪庵のたいまつという話の2部構成です。
最初の二十一世紀に~は、司馬さんが二十一世紀に生きる者達へ是非実践して欲しい伝えたいことを書いています。
洪庵のたいまつは、江戸時代の蘭学医(オランダ語医術書を読解する医者)の緒方洪庵の物語。
この2つの話は、どちらも小学生向けに書いたものです。
果たしてこれを小学生の私が読んで、理解できるのかどうか。文中でも説明されてますが、歴史背景を勉強していない小学生に、江戸時代の蘭学医洪庵と言われても分からない気がします。
これは司馬さんから時代考証なんて成長していけば追々分かるから、基本的な部分を理解しなさいというメッセージと受け取りました。では、この本の中で基本的な部分というのはどこなんでしょうか?
私が受け取った2点をご紹介します。
自己を確率せよ
もう一度くり返そう。さきに私は自己を確立せよ、と言った。
自分に厳しく、相手にはやさしく、とも言った。いたわりという言葉も使った。それらを訓練せよ、とも言った。
それらを訓練することで、自己が確立されていくのである。そして、“たのもしい君たち”になっていくのである。
P.23
著者は、前文でも再三自己を確立せよと繰り返し述べられています。
自分に厳しく・相手にやさしく・いたわりといった言葉は、小学校の道徳の授業でも勉強しませんでしたか?
基本的なことなのですが、忙しい日々に忘れがちになっていませんか?この逆をされる方が多くなっている気がしてなりません。
以前にコンピュータが、人間を凌駕する時がきてしまうのではないか?という記事を書きましたが、本著でいう自己を確立さえしておけば、共存共栄が可能な気がします。
自己を鍛錬して、確立する。言うは易し行うは難しですが、頑張っていきたいですね。
伝承するということ
洪庵は、自分の恩師たちから引きついだたいまつの火を、よりいっそう大きくした人であった。かれの偉大さは、自分の火を、弟子たちの一人一人に移し続けたことである。
P.44
洪庵という人物は、私利私欲がなかったそうです。将軍の御殿医(医者)に度々就職依頼があったのに断り続けていたので、筋金入りなんでしょうね。
現代は、欲が溢れかえっています。金銭欲・食欲・名誉欲等々。
私は、欲は悪いことではないと思っています。人類の進化には、欲が不可欠だからです。
ただ、欲だけで生きるのも苦しいです。人間というのは、いつかは死んでしまいます。
自分の知識・体験を他者に役立てられるものであれば、伝えていくのも1つの使命ではないのか?と考えさせられました。
まとめ
内容自体は、ネットで探せば全文読めるサイトがあるくらい短い本です。成人した大人であれば、10分程度で読書できてしまいます。
じゃあ何故わざわざお金を出してまで、買ったのか?
読めるんですが、非常に奥が深いです。
私の紹介した2点以外にも年を経て、経験を積んだ後に読み返せば、また違った見方ができそうです。噛めば噛むほど味が出るスルメみたいな本ですね。
逆に案外こういった本は、小学生5.6年で読んだ方がスーッと本質を理解できるのかもしれません。子供が成長して本を読み出したら、読ませてやりたい一冊です。
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