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PMI決算分析:5年間の軌跡とスモークフリー革命の真実

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【結論】PMIは今買いか?答えは「慎重ながらも前向き」

PMIへの投資は「構造転換期の巨人への賭け」です。

2024年決算で同社は驚異的な成長を遂げ、スモークフリー事業が売上の40%、粗利益の42%を占めるまでに成長しました。

しかし、アナリスト間で強気派と慎重派に分かれる現状は、この投資の複雑さを物語っています。

核心的な投資論理

PMIは世界最大の国際タバコ会社から「次世代ニコチン体験企業」へ転換中です。

PMIの主力スモークフリー製品:
IQOS:タバコ葉を燃やさず加熱する製品
ZYN:口に含むニコチンポーチ(タバコ葉不使用)
VEEV:リキッド加熱式の電子タバコ

これらで業界をリードしており、17年連続増配の実績と年率7%の配当成長を維持しています。

この記事では以下を詳しく解説します:

  • PMIの直近決算の中身
  • 過去5年間の業績推移
  • アナリスト予想の分岐点

2024年決算の衝撃:「remarkable year」の中身

CEO Jacek Olczak氏が「remarkable year(驚異的な年)」と表現した2024年決算は、PMIの構造転換が収益に直結している現実を如実に示しました。

主要財務指標

PMIの2024年決算は数字の面でも圧倒的でした。

調整希薄化EPSは$6.57と前年比9.3%成長(通貨中立ベースで15.6%成長)を達成し、報告ベース希薄化EPSは$4.52(カナダ関連減損$1.49を除くと$6.01)となりました。

特に注目すべきは営業キャッシュフローが$12.2Bの過去最高を記録し、調整純利益も初の100億ドルを突破したことです。

スモークフリー事業の劇的成長

2024年の最大のトピックは、スモークフリー事業が会社全体の収益構造を根本的に変えたことです。

第4四半期の構造変化

・スモークフリー事業が総売上の40%
・調整粗利益では42%まで拡大
・トップ5市場では売上の約60%がスモークフリー製品

スモークフリー製品とは?

PMIのスモークフリー製品は主に3つのカテゴリーに分類されます。

1. IQOS(アイコス)- 加熱式タバコ
・タバコ葉を燃やさず加熱する製品
・従来タバコより有害物質を大幅削減
・日本では「プルーム」と競合

2. ZYN - ニコチンポーチ
・口に含むタバコ葉不使用の小袋
・ニコチンのみを摂取(煙なし・火なし)
・米国で爆発的人気

3. VEEV - 電子タバコ(ベイプ)
・リキッドを加熱して蒸気を吸入
・ニコチン入りリキッド使用
・欧州中心に展開

これらは従来の「燃やすタバコ」と違い、煙を出さないため「スモークフリー」と呼ばれます。

ユーザー基盤の急拡大

全世界のスモークフリー製品ユーザー数は3,860万人に達し、前年比530万人の増加を記録しました。

展開市場数は95市場(2024年末時点、2025年Q2には97市場に拡大)となり、ほぼ全世界をカバーする状況となっています。

年間売上成長は14.2%増(スモークフリー事業)を達成しており、2024年通年でスモークフリー事業は純売上の約39%を占めています(Q4単体では40%)。

この規模感を理解するため従来のタバコ大手企業と比較すると、PMIのスモークフリー事業だけで業界4-5位の企業規模に匹敵しています。

主力製品の詳細分析

IQOS:世界制覇への道筋

IQOSは発売から10年で、世界第2位のニコチンブランドという地位を確立しました。その成長軌道は圧倒的です。

日本市場での圧倒的支配

IQOSの日本での成功は驚異的です。

2024年末時点で日本国内のHTU(加熱式タバコ)シェアは約31.7%を獲得し、日本の総ニコチン摂取量の47%をHTUカテゴリーが占めるまでに成長しました。

IQOSはこのHTUカテゴリーで#1ポジションを維持しており、安定した成長を継続しています。

グローバル展開の圧倒的スケール

世界規模では、IQOSは全世界HTUカテゴリーの75%以上を占有しており、HTU調整市場内売上(IMS)が通年で12.6%増加しました。

特筆すべきは年間純売上が$11〜12B規模に達したことで、これは単一製品として驚異的な規模です。

収益性の革命

重要なのは売上だけではありません。

IQOSは従来のタバコパックと比較して2.5倍の売上と2.6倍の利益を生み出します。これは単なる製品置換ではなく、収益構造の根本的改革を意味します。

ZYN:米国ニコチンポーチ市場の絶対王者

Swedish Matchの買収により獲得したZYNは、PMIの米国戦略の中核を担う存在となりました。

爆発的成長の実態

ZYNの成長ぶりは文字通り爆発的です。

2025年Q2には米国で約1.9億缶の出荷を記録し、前年同期比23.8%の成長を達成しました(Q1では27%成長)。

2025年1月にFDA承認を取得した唯一のニコチンポーチブランドとなったことは、競争優位性の決定的要因となっています。

市場拡大戦略の成功

ZYNは現在37市場に展開しており、米国外でも成長が加速しています。

米国外での四半期出荷量は倍増を記録し、メキシコ、南アフリカなどの新興市場で顕著な成長を示しています。

収益性の衝撃

ZYNの収益性は更に驚異的で、従来のタバコパックと比較して6倍の利益を生み出します。これがPMIの利益率向上の原動力となっています。

供給制約が示す圧倒的需要

2024年4月から発生した供給不足は、ZYNの人気の高さを如実に示しています。

主要コンビニエンスストアチェーンがZYN専用ディスプレイスペースを拡大し、一部店舗では従来のタバコ売り場の半分以上をZYNが占めるまでになっています。

5年間業績推移:構造転換の軌跡を数字で追跡

売上高成長:逆風下での安定成長の奇跡

タバコ業界全体が縮小する中、PMIは驚異的な成長軌道を維持しています。

年次売上高推移

PMIの5年間の売上高成長は、業界の逆風を跳ね返す驚異的な軌跡を描いています。2020年の約$28.7Bから始まり、2021年に約$31.4B(9.4%成長)、2022年は$31.762B(1.14%成長)、2023年は$35.174B(10.74%成長)、そして2024年は約$37.87B(7.7%成長)となりました。

5年間累計成長率は約32%に達しています。

この成長が特筆すべきなのは、従来タバコ市場が年率2-3%縮小する中での達成だからです。

つまり、PMIはスモークフリー製品の成長で従来事業の減少を完全に相殺し、さらに全体成長を実現したのです。

配当政策:株主還元の模範的一貫性

PMIの配当政策は、投資家にとって極めて魅力的な要素の一つです。

配当成長の実績

PMIの配当政策は投資家にとって模範的です。

2008年の株式公開以来、17年連続増配を継続し、累計増配率は193.5%年平均成長率は7.0%を達成しています。

現在の配当利回りは約3.15%となっており、S&P500平均を上回る魅力的な水準です。

この数字の背景にあるのは、景気変動や業界逆風、さらには世界的パンデミックの中でも、PMIが安定した現金創出力を維持し続けたという事実です。

事業構造革命:5年間で見た劇的変化

最も重要な変化は、PMIの事業構造が根本的に転換したことです。

2020年 vs 2024年比較

この5年間でPMIの事業構造は劇的に変化しました。

スモークフリー事業売上比率は約20%から40%へと倍増し、スモークフリー製品ユーザー数は約2,000万人から3,860万人へ93%増加しました。

また、展開市場数は約50市場から95市場へ90%増加し、スモークフリー事業売上成長は14.2%増を記録しています。

この変化は単なる新商品の追加ではありません。

PMI全体のDNA転換を示しており、同社が「タバコ会社」から「ニコチン体験企業」へと進化していることを証明しています。

地域別戦略:グローバル展開の現状と今後の展望

欧州市場:フレーバー禁止を乗り越える回復力

欧州は PMIにとって重要な市場でありながら、2024年は大きな試練の年でもありました。

フレーバー禁止の影響と対応

欧州市場では大きな規制変化に直面しました。

2024年に20億本、2025年にさらに10億本の売上減少が予想されており、影響は主に第1四半期に集中すると見込まれています。

しかし、第4四半期には早くも市場シェア回復の兆候が確認されており、PMIの適応力の高さを示しています。

VEEVの躍進

一方で新たな成長ドライバーも生まれています。

VEEVは13の欧州市場でトップ3ポッドブランドを達成し、5市場で1位を獲得(チェコ、イタリア、ルーマニア、ギリシャなど)しており、多角戦略の成功例として注目されています。

回復戦略の効果

欧州での経験は、PMIの適応力を示す好例です。

規制変化に対する迅速な対応と、代替製品による補完戦略により、中長期的な成長軌道の維持が期待されています。

米国市場:ZYNブームとIQOS本格参入の相乗効果

米国市場は、PMIの将来を左右する最重要戦略地域です。

ZYNの爆発的成長

米国市場では興味深い現象が起きています。

供給不足が2024年4月から発生したことは、ZYNの需要の強さを如実に証明しており、2025年第3四半期に供給正常化予定となっています。この状況を受けて、主要コンビニチェーンがZYN専用スペースを拡大する動きが加速しています。

コンビニ業界の構造変化

小売業界にも大きな変化が生まれています。

Casey's General Storesは戦略的にZYNを店舗前面に配置し、大幅な成長を記録しました。

7-Elevenは戦略的投資により、タバコ関連売上の53%がノンコンバスティブル製品となりました。Murphy USAでは従来タバコ売り場の大幅な配置変更を実施しています。

また、2025年Q2の決算では売上$10.14B(前年比7.1%増)を記録しましたが、アナリスト予想$10.33Bをやや下回る結果となりました。しかし調整後EPSは$1.91と予想$1.86を上回る好調な収益性を示しています。

IQOS戦略的投入

同時に、2024年末から本格展開を開始したIQOSは、テキサス州オースティンからスタートし、従来タバコの4倍の収益性が期待されています。

これは米国でのHTU市場創造への野心的な取り組みです。

アジア太平洋:日本を中心とした安定成長基盤

日本市場の圧倒的ポジション

アジア太平洋地域では、日本が安定した成長基盤となっています。

HTU市場シェア30.6%で着実な拡大を継続し、主要都市でHTUカテゴリーが50%突破という歴史的なマイルストーンを達成しました。ILUMA iの投入により成長が加速している状況です。

その他のアジア市場では、韓国、フィリピンなどでの着実な成長、規制環境の多様性を活かした地域別戦略、そして中国市場への将来的な参入可能性が注目されています。

2025年業績ガイダンス:成長継続のロードマップ

会社発表の強気な成長予想

PMIが発表した2025年ガイダンスは、構造転換の加速を前提とした野心的な目標です。

核心的成長指標

会社側の予想は前向きです。

2025年最新ガイダンスでは調整希薄化EPSを$7.43〜$7.56(Q2時点で上方修正)に設定しており、スモークフリー製品出荷量成長12〜14%米国ニコチンポーチ出荷量780〜840百万缶(約38〜45%成長)を見込んでいます。

オーガニック売上成長6〜8%オーガニック営業利益成長10.5〜12.5%を目標としています。

収益性指標

利益面でも堅調な予想が続きます。

2025年最新ガイダンスの調整希薄化EPS$7.43〜$7.56は、当初予想から上方修正されており、営業キャッシュフローは約110億ドルを見込んでいます。

成長ドライバーの詳細解剖

1. HTU事業の安定成長

加熱式タバコ事業は安定した成長基盤となっています。絶対成長が2024年水準を維持し、10〜12%の成長率を継続する見込みです。出荷タイミングと在庫変動の正常化を前提としています。

2. ニコチンポーチ事業の爆発的拡大

最も注目すべき成長ドライバーです。

米国市場では34〜41%成長(供給制約解消の恩恵)が見込まれています。国際市場では53%成長が継続し、新興市場での急拡大が期待されます。37市場への展開が完了し、さらなる拡大余地があります。

3. 地域別成長戦略

地域ごとに異なる戦略が展開されます。

欧州ではフレーバー禁止影響からの段階的回復を見込んでいます。米国ではZYN供給正常化とIQOS本格展開が予定されています。アジアでは日本中心の安定成長基盤を維持します。

最終投資判断:PMIは「買い」か「待ち」か

総合投資評価:「慎重ながらも前向き」の根拠

PMIへの投資を検討する際、以下の総合評価が最も適切です。

圧倒的な強み(Buy要因)

明確な投資メリットがあります。

スモークフリー事業の構造的成長性:業界をリードする技術と市場地位があります。

世界最大国際タバコ会社のスケールメリット:参入障壁と価格交渉力を有しています。

17年連続増配の株主還元実績:経営の一貫性と財務規律を示しています。

次世代ニコチン市場での先行者利益:IQOS、ZYNでの競争優位性があります。

注意すべき課題(Hold/Sell要因)

一方で以下のリスクも存在します。

規制リスクの不透明性:政策変更による業績インパクトがあります。

競争激化による収益性圧迫懸念:新規参入と価格競争の可能性があります。

為替変動による業績ボラティリティ:ドル高の継続的影響があります。

アナリスト予想の分岐状況:市場コンセンサスの不安定性があります。

 

結論:PMIは「構造転換期の巨人」への長期投資

最終メッセージ:変革への賭けの価値

フィリップモリス・インターナショナルは、まさに「過渡期の企業」です。

世界最大の国際タバコ会社から次世代ニコチン体験企業への歴史的転換期にあり、この変化を成功させれば投資家に大きなリターンをもたらす可能性があります。

投資判断の核心は、あなたがこの「構造転換への賭け」にどの程度のリスクを受け入れられるかです。

確実に言えることは、PMIが業界をリードする形でスモークフリー革命を推進しており、その成否が同社の長期パフォーマンスを決定するということです。

PMIは慎重ながらも前向きに検討すべき投資対象です。

17年連続増配の実績と革新的な事業転換の組み合わせは、他では見つけることが困難な投資機会を提供しています。

ただし、規制リスクと競争激化という現実的な課題も存在するため、分散投資の原則を守り、定期的なモニタリングを継続することが成功の鍵となるでしょう。


投資は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、個別の投資助言ではありません。

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