結論:学資保険の魅力は薄れている
率直に言えば、2025年現在の学資保険は魅力的な選択肢とは言えません。
学資保険の返戻率は多くの商品で100-105%程度、条件によっては107-127%のプランも存在します。
しかし年換算利回りは0.1-0.3%と低水準で、定期預金にすら劣る場合があります。
確かに「強制貯蓄効果」はありますが、あまりに強制力が高すぎて解約が困難なのは大きなリスクです。
この記事では、学資保険の現実的な問題点を明らかにし、より効率的な教育資金準備方法をお伝えします。
学資保険の現実:定期預金以下の利回り
2025年の学資保険の実態
現在の主要保険会社の学資保険を調査した結果、厳しい現実が見えてきました。
主要保険会社の返戻率(18年満期)
多くの商品で100-105%程度が標準的な水準となっています。
ソニー生命や明治安田生命などの人気商品では、条件によって107-127%程度の返戻率を実現する商品もあります。
95%台の低い返戻率の商品は少数派です。
ただし、これを年換算利回りに換算すると、0.1-0.3%程度です。
定期預金との比較
現在の定期預金金利と比較してみると、学資保険の優位性は疑問視されます。
大手銀行の定期預金金利(2025年)
多くの大手銀行で年0.002-0.01%程度の金利となっています。
ネット銀行では年0.1-0.3%程度の金利を提供している場合もあります。
つまり、学資保険の年利0.1-0.3%は、ネット銀行の定期預金と大差ない水準です。
しかも定期預金なら解約の自由度が高く、急な資金需要にも対応できます。
機会損失の深刻さ
18年間という長期間を考慮すると、機会損失は無視できません。
月額1.5万円を18年間積立(総額324万円)した場合を考えてみましょう。
学資保険なら満期時約330万円(返戻率102%)になります。
年利1%の定期預金なら満期時約360万円になります。
この場合の機会損失は30万円です。
さらに、年利3%で運用できた場合の機会損失は100万円にもなります。
教育費の実態:本当に必要な金額と時期
段階別教育費の詳細
文部科学省のデータに基づく教育費の実態をお伝えします。
幼稚園から高校まで(15年間)
全て公立の場合は約540万円、全て私立の場合は約1,830万円、公立中心で高校のみ私立の場合は約720万円となっています。
大学費用(4年間)
国公立大学は約500万円、私立文系は約700万円、私立理系は約930万円となっています。
習い事・塾費用(年間平均)
小学生は20万円、中学生は35万円、高校生は40万円となっています。
支出時期の分散効果
教育費は段階的に支出されるため、一括で大きな金額が必要になることは実際には少ないのです。
この特徴は、より柔軟な資金準備方法を選択する根拠となります。
学資保険の問題点:過度な拘束力
強制貯蓄効果の落とし穴
学資保険には確かに「強制貯蓄効果」があります。
学資保険は解約時の元本割れというペナルティがあるため、「やめにくさ」が貯蓄の継続を促進します。
一方で、自主的な積立貯蓄を長期間継続することは多くの人にとって困難であることが知られています。
しかし、この強制力があまりに強すぎるのが問題です。
中途解約の深刻なリスク
多くの学資保険では、加入から長期間にわたって解約すると元本割れとなります。
金融庁の調査によると、契約初期の返戻金率は70%前後まで落ち込むため、元本割れリスクが続きます。
18年間の人生で起こりうる変化
- 転職や収入減少
- 住宅購入などの大きな支出
- 家族の病気や介護
- 教育方針の変更
- より良い投資機会の発見
これらの変化に対応できない硬直性は、現代の家計にとって大きなリスクです。
流動性の致命的な低さ
学資保険の最大の問題は、資金の流動性の低さです。
急な資金需要に対応困難で、他の有利な投資機会への乗り換えができません。
家計状況の変化に柔軟に対応できないのは、子育て世代にとって致命的です。
特に子育て世代は、住宅購入、転職、病気など、予期せぬ資金需要が発生する可能性が高いからです。
より良い安全資産の選択肢
国債という選択肢
安全性を重視するなら、学資保険よりも個人向け国債の方が優れています。
個人向け国債の特徴
- 元本保証(国の信用力)
- 1年経過後はいつでも解約可能
- 直近1年分の利子を除いて元本割れなし
- 学資保険より高い利回りの可能性
変動10年なら市場金利に連動するため、金利上昇時には恩恵を受けられます。

定期預金の再評価
ネット銀行の定期預金も有力な選択肢です。
定期預金のメリット
- 預金保険の対象(1,000万円まで元本保証)
- 学資保険並みかそれ以上の利回り
- 中途解約時も元本割れなし(利息は減額される程度)
- 金融機関の選択肢が豊富
自動積立定期預金なら、学資保険と同様の自動化効果も得られます。
財形貯蓄の活用
勤務先に財形貯蓄制度があるなら、これも検討に値します。
財形貯蓄のメリット
- 給与天引きによる強制貯蓄効果
- 一般財形なら用途自由
- 学資保険より良い条件の場合が多い
- 会社によっては奨励金あり
投資による教育資金準備:リスクを取る価値
長期投資の威力
過去のデータを分析すると、長期投資の威力は明らかです。
全世界株式インデックスファンドの実績
15年間積立投資(2009-2024)では年平均リターン約7%を記録しています。
これは過去の実績であり、将来の成果を保証するものではありません。
過去の統計では、20年以上の長期投資では元本割れの可能性は極めて低くなります。
複利効果により、年利3%で18年積立すると約1.7倍になります。
リスクの現実的評価
投資には確実にリスクがあります。
しかし、そのリスクを正しく理解することが重要です。
短期的な損失の例
2008年リーマンショック時は約40%の含み損が約3年継続しました。
2020年コロナショック時は約30%の含み損が約6ヶ月継続しました。
長期積立投資での損失リスク
過去の統計を見ると、投資期間が長くなるほど元本割れのリスクは大幅に低下します。
ただし、短期的には大きな変動があることも事実です。
重要なのは、積立投資を継続することです。
一時的な損失に動揺して売却してしまうと、長期投資の恩恵を受けられません。
つみたてNISAの活用
2024年から新しくなったつみたてNISAは、教育資金準備に最適です。
つみたてNISAのメリット
- 年間360万円まで非課税投資可能
- 運用益が非課税
- いつでも解約可能
- 金融庁が選定した優良商品のみ
学資保険と比較して、圧倒的に自由度が高く、リターンも期待できます。
世代別・収入別の現実的戦略
年収300-500万円世帯:安全重視だが学資保険は避ける
推奨配分
定期預金・国債70%(月額1-1.5万円)、つみたてNISA30%(月額0.5-1万円)がおすすめです。
この戦略を選ぶ理由
家計に余裕が少ないため安全性が重要ですが、学資保険では流動性リスクが高すぎます。
定期預金や国債なら学資保険並みの安全性を保ちながら、柔軟性を確保できます。
年収500-800万円世帯:投資比重を高める
推奨配分
安全資産40%(月額1-1.5万円)、つみたてNISA60%(月額2-3万円)がおすすめです。
この戦略を選ぶ理由
適度なリスクを取れる家計余裕があるため、学資保険よりも投資中心の戦略が効果的です。
安全資産部分も定期預金や国債で十分です。
年収800万円以上世帯:投資中心戦略
推奨配分
安全資産20%(月額1万円)、つみたてNISA80%(月額4-6万円)がおすすめです。
この戦略を選ぶ理由
一時的な損失にも対応できる家計余裕があるため、長期的な資産形成効果を最大化できます。
学資保険は全く不要です。
これらの戦略は、ファイナンシャルプランナーの一般的な推奨例であり、個別の状況によって最適解は変わります。
自動化の重要性:学資保険に頼らない強制貯蓄
自動積立の設定
学資保険の「強制貯蓄効果」は、他の方法でも十分に実現できます。
自動化の方法
- 給与振込口座からの自動振替
- 定期預金の自動積立
- つみたてNISAの定期買付
- 財形貯蓄の活用
重要なのは、自分でコントロールできる自動化を選ぶことです。
心理的な工夫
学資保険に頼らずとも、貯蓄を継続する心理的な工夫があります。
継続のコツ
- 目標金額を明確にする
- 進捗を定期的に確認する
- 家族で目標を共有する
- 無理のない金額から始める
別口座での管理
教育費専用の口座を作り、絶対に手をつけないルールを作ることで、学資保険並みの「やめにくさ」を作れます。
まとめ:学資保険に頼らない教育資金準備
学資保険を選ぶべきでない理由
利回りの低さ
年利0.1-0.3%では定期預金と大差なく、18年間拘束される価値がありません。
過度な拘束力
18年間の人生の変化に対応できない硬直性は、現代の家計には不適切です。
機会損失の大きさ
より良い投資機会や、急な資金需要に対応できません。
推奨する教育資金準備方法
安全性重視の場合
定期預金や個人向け国債を活用し、学資保険並みの安全性を確保しながら流動性を保ちます。
収益性重視の場合
つみたてNISAを中心とした長期投資で、教育費の大幅な増加を目指します。
バランス重視の場合
安全資産40%、投資60%程度の配分で、安全性と収益性を両立させます。
最終的な判断基準
教育資金の準備方法を選ぶ際は、以下の要素を総合的に考慮してください。
家計の余裕度
無理のない範囲での積立額を設定することが重要です。
リスク許容度
投資損失への心理的・財務的な耐性を考慮しましょう。
流動性の必要性
将来の変化への対応能力を重視しましょう。
継続可能性
18年間継続できる現実的な方法を選ぶことが最も重要です。
最も重要なのは、学資保険の「安心感」に惑わされず、数字と現実を見つめることです。
2025年現在、学資保険は教育資金準備の最適解ではありません。
定期預金や国債といった安全資産、つみたてNISAなどの投資商品を組み合わせることで、学資保険よりも優れた教育資金準備が可能です。
あなたの家庭の状況を踏まえて、学資保険に頼らない効率的な教育資金準備方法を選択し、子どもの明るい未来を支える準備を今から始めましょう。
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