結論:今、日本に必要なのは“未来を支える財政”を考えること。
借金か、それとも節約か。
ここまで8回にわたって「国の借金」にまつわる誤解と議論を整理してきました。
そして今、私たちが向き合うべき問いはこれです。
どんな財政が、これからの自分たちの生活を支えてくれるのか?
数字に振り回されるのではなく、生活の視点から財政を見直す。
この最終回では「どう使い、どう守るか?」という未来視点の財政運営について考えます。
1. “財政健全化”だけで生活は守れない
たしかに、借金が増え続けるのは心配かもしれません。
でも、もし支出を削り続けて、医療、教育、保育、災害対策などが機能しなくなったら?それは“帳簿が健全でも、暮らしが壊れている”状態です。
現実に、保育士不足や地方の公立病院の閉鎖など、「支出抑制の影」が社会のあちこちに出ています。
財政の目的は、「国民の生活の質を守ること」。数字を守ることがゴールではありません。
2. 赤字でも、未来の投資になる支出がある
たとえば、今の子どもたちへの教育投資や、脱炭素やAIなどの次世代技術開発への支援。こうした支出は、数十年後の日本の生産性と税収を底上げします。
もちろんすべての支出が良いわけではありません。ですが、「赤字だからすべて悪い」とは限らないのです。
インフラの老朽化に対応した補修、地方創生、科学技術への投資…。
未来につながる支出を“投資”として捉える視点が求められています。
3. 「信認」を守るのは、“使い方の納得感”
海外投資家や市場が「日本の通貨や国債は信用できない」と思えば、円安や金利上昇が一気に進む可能性もあります。
ですが、その信認は「赤字か黒字か」ではなく、政府の運営姿勢や説明責任で決まります。
- 透明性のある予算編成
- 国民への説明
- 将来ビジョンの明示
これらがきちんと行われていれば、借金があっても市場は動揺しません。
信認は“見せ方”で保たれるのです。
4. 若い世代の未来と、財政運営をつなげる
「将来世代へのツケ」という言葉があります。
でも、若者のために今、教育投資や雇用創出を控えることこそが、将来の可能性を潰すことにならないでしょうか?
若い世代の不安を減らし、「希望」を増やすために、政府が今どんな選択をするかは非常に重要です。
たとえば、出産や子育てにかかる費用が高くて結婚に踏み切れない若者、
奨学金の返済に追われて夢を諦める学生たち…
こうした現実に「財政が応える」ことが、世代間の公平性を保つ第一歩です。
5. 持続可能な財政とは、“数字より信頼”
持続可能な財政とは、「黒字であること」ではなく、
「経済が成長し、生活が安定し、社会の信頼が保たれること」だと言えます。
実際、GDPが成長すれば債務比率(対GDP比)は改善し、税収も自然と増えていきます。
つまり、緊縮で「今」を苦しめるより、未来に備えた「投資」で回復のループを作るほうが、より現実的で前向きな再建戦略です。
まとめ:未来を見据えた、柔軟な財政運営を
- 今の日本は“使わなさすぎ”で社会の持続性が危うい
- 財政赤字=悪ではなく、“何に使うか”が問われている
- 信認や将来世代とのバランスをとった財政運営がカギ
最も大事なのは、「国民の暮らしに財政がどう関わるか」を知ること。
財政の話は、けっして遠い誰かの話ではありません。
あなたの未来を守る財政とは、生活に“安心”を届ける財政です。
9回シリーズを読んでくださった皆さんへ
ここまで、「借金は本当にヤバいのか?」という疑問を出発点に、様々な角度から財政を見てきました。
この連載が、「不安」ではなく「考える力」に変わるきっかけになれば幸いです。
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