
はじめに:あなたに最適な不動産投資はどちら?
不動産投資に興味があるけれど、実物の物件を買うべきか、REITで始めるべきか迷っていませんか。結論から言えば、初心者や少額から始めたい方にはREITが、資金力があり不動産経営に時間を割ける方には実物不動産投資が向いています。
実物不動産投資とREITは、どちらも不動産から収益を得る投資手法ですが、初期資金、管理の手間、利回り、流動性という4つの重要な観点で大きく異なります。
本記事では、この4つの軸から両者を徹底比較し、あなたに最適な選択肢を明らかにします。読み終える頃には、自分にぴったりの不動産投資の形が見えてくるはずです。
実物不動産投資とREIT:基本的な違いを理解する
実物不動産投資とは、マンションやアパート、戸建てなどの物件を実際に購入し、賃貸収入や売却益を得る投資手法です。あなた自身が「大家さん」になり、物件を所有・運営します。
最大の特徴は、銀行融資を活用したレバレッジ効果です。自己資金500万円で2,500万円の物件を購入すれば、5倍のレバレッジをかけたことになり、少ない元手で大きな資産を動かせます。
一方、REITは「不動産投資信託」の略で、多くの投資家から集めた資金でプロが不動産を購入・運営し、その収益を投資家に分配する金融商品です。
東京証券取引所に上場するJ-REITなら、株式と同じように証券会社を通じて売買できます。投資家は物件の管理や運営に一切関わらず、年に2回の分配金を受け取るだけです。
両者の根本的な違いは、実物不動産が「自分で所有・経営する」のに対し、REITは「プロに運用を任せる」点にあります。この違いが、初期資金、管理負担、リスクとリターンの全てに影響を与えます。
初期資金の違い:500万円 vs 数万円
実物不動産投資を始めるには、最低でも500万円程度の自己資金が必要です。東京23区のワンルームマンションは2,500万~3,500万円が相場で、頭金として物件価格の10~20%を求められます。さらに物件価格の7~10%の諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税、融資手数料など)が発生します。つまり、2,500万円の物件を購入するなら、最低でも425万~750万円の現金が必要です。
一棟アパートになると、木造で5,000万~1億円、RC造マンションでは1億円以上となり、自己資金として1,000万~3,000万円を準備しなければなりません。この高額な参入障壁が、実物不動産投資を富裕層向けと言われる理由です。
REITは数万円から投資を始められます。住宅系REITなら10万~30万円で1口購入でき、証券会社の単元未満株取引を使えば数千円から投資可能です。100万円あれば複数の銘柄に分散投資することもできます。この圧倒的な参入障壁の低さが、REITを初心者や若い世代に人気にしている最大の理由です。
レバレッジ効果の観点では実物不動産に魅力があります。自己資金500万円で2,500万円の物件を購入し、年間50万円のキャッシュフローが得られれば、自己資金利回り(ROE)は10%です。しかし、これは借金というリスクを背負うことで得られる効果であり、金利上昇や空室率増加で収益が悪化すれば、自己資金を失うリスクもあります。
REITは個人投資家が融資を利用できないため、投資額=自己資金となります。ただし、REIT運用会社レベルでは、LTV(ローン・トゥ・バリュー:負債比率)40~50%程度で借入を活用して運用しています。
つまり、間接的にはレバレッジ効果を享受しているのです。それでも投資家個人は借金を背負わず、その分リスクも限定的です。100万円投資して配当利回り4%なら年間4万円の分配金です。元本割れリスクはありますが、借金返済に追われるプレッシャーはありません。
管理の手間:月20時間 vs 実質ゼロ
実物不動産投資で自主管理を選ぶと、月に10~20時間の作業時間が必要になります。入居者募集では不動産会社との打ち合わせ、物件情報の作成、内見対応で1件あたり2~5時間を要します。入居審査では申込者の収入証明や身元確認を慎重に行わなければ、後の家賃滞納トラブルにつながります。
入居後も対応は続きます。エアコンの故障、水漏れ、騒音トラブルなど、クレームは突発的に発生し、夜間や休日でも対応を求められることがあります。特に水漏れは下の階への被害拡大を防ぐため、即座の対応が必要です。
退去後の原状回復では、クリーニング業者や修繕業者との調整、立ち会い確認で数時間を要します。さらに確定申告では、家賃収入の集計、経費の整理、減価償却の計算など、年間20~40時間の作業が発生します。
管理を不動産会社に委託すれば、家賃の5~10%を支払うことで大幅に負担を減らせます。それでも月に1~3時間程度の時間は必要で、管理会社との連絡調整、大規模修繕の判断、収支管理はオーナーとして行わなければなりません。特に大規模修繕では数百万円単位の支出判断が求められます。
REITの管理負担は実質ゼロです。投資家がすべきことは、証券口座で購入ボタンを押すことと、年に数回分配金を受け取ることだけです。
物件の管理、入居者対応、修繕判断はすべてREIT運営会社のプロフェッショナルが行います。厳密には、分配金の再投資判断や運用報告書の確認といった作業は発生しますが、実物不動産と比較すれば圧倒的に軽微です。
忙しい会社員にとって、この管理負担の違いは極めて重要です。本業に集中したい方、時間的余裕がない方には、管理負担が実質ゼロのREITが圧倒的に適しています。
利回りの真実:実質利回りで判断する
不動産投資において利回りは最も重要な指標ですが、表面利回りと実質利回りの違いを理解していないと、大きな判断ミスを犯します。実物不動産の広告で「利回り10%!」と謳われているのは、ほとんどが表面利回りです。これは年間家賃収入を物件価格で割った単純な数字で、満室を前提とし、経費を一切考慮していません。
実質利回りは、年間家賃収入から諸経費を差し引き、物件価格と取得費用の合計で割って計算します。
諸経費には固定資産税・都市計画税(家賃収入の10~15%)、管理委託費(家賃の5%)、修繕積立金、火災保険料、原状回復費用などが含まれ、これらを合計すると家賃収入の20~30%が経費として消えます。さらに現実には年間15~20%の空室期間が必ず発生します。
例えば、表面利回り5%の区分マンションでも、諸経費と空室を考慮すると実質利回りは2.5~3.5%程度まで下がります。都心プレミアム物件では実質利回り2~3%、一般的な物件で2.5~4%程度が現実的な数字です。一棟物件は規模のメリットで経費率を下げられるため、表面利回り6~10%に対し、実質利回りは4~7%程度を期待できます。
REITの配当利回りは実質的な利回りに近い数字です。
2024年10月時点でJ-REIT全体の平均配当利回りは4.2%です(出典:東証REIT指数2024年10月末)。セクター別に見ると、オフィス型は3.5~4.0%、住宅型は4.0~4.5%、商業施設型は4.5~5.5%となっています。
分配金から源泉徴収税20.315%が引かれますが、NISA口座を利用すれば非課税で受け取れます。保有中の管理コストは実質ゼロです。
レバレッジ効果を考慮すると、実物不動産投資の魅力が見えてきます。自己資金500万円で2,500万円の物件を購入し、年間50万円のキャッシュフロー(ローン返済後の手残り)が得られれば、自己資金利回り(ROE)は10%です。
これは配当利回り4%のREITを大きく上回ります。ただし、これは借金リスクを背負うことで得られる効果です。
流動性:3ヶ月 vs 3営業日
投資において見落とされがちですが、極めて重要なのが「流動性」、つまり換金のしやすさです。実物不動産の流動性は極めて低く、物件を売却して現金化するまでに通常3~6ヶ月かかります。
不動産会社への査定依頼、媒介契約の締結、買い手探し、内覧対応、価格交渉、売買契約、買い手のローン審査、決済・引き渡しというプロセスを経なければなりません。
急いで売却したい場合は、相場より10~20%安い価格で不動産買取業者に売却する方法もありますが、大きな損失を覚悟しなければなりません。
売却時には仲介手数料(売却価格の約3%)、登記費用、譲渡所得税など、売却価格の6~10%程度のコストが発生します。さらに深刻なのは、売りたいときに必ず売れるとは限らない点です。不動産市況が悪化している時期や、物件に問題がある場合は、買い手が見つからず何ヶ月も売れ残ることがあります。
REITの流動性は株式とほぼ同等で、圧倒的に高いと言えます。東京証券取引所の営業時間内なら、いつでも売買注文を出せます。
市場価格で売買が成立すれば、約3営業日後には代金が証券口座に入金されます。つまり、「今すぐ現金が必要」という状況でも、1週間以内に換金できるのです。売却コストも証券会社の売買手数料のみで、ネット証券なら0.1~0.5%程度です。
部分売却が可能な点も大きなメリットです。500万円分のREITを保有している場合、100万円だけ売却して残り400万円は保有し続けることができます。
必要な金額だけを柔軟に現金化できるため、急な出費にも対応しやすいのです。価格の透明性も重要で、REITは市場価格が常に表示されており、「今いくらで売れるか」が一目瞭然です。
流動性の観点では、REITが圧倒的に優れています。急な資金需要に備えたい方、ライフプランが不確定な若い世代、いつでも投資方針を変更できる柔軟性を求める方には、REITが適しています。
メリット・デメリット:総合比較
実物不動産投資のメリット・デメリット
実物不動産投資の最大のメリットは、銀行融資を活用したレバレッジ効果です。自己資金の数倍の物件を購入でき、自己資金利回りを大きく高められます。税制優遇も見逃せません。
建物の減価償却費を経費計上することで、帳簿上は赤字にしながら実際にはキャッシュフローを得ることが可能です。給与所得との損益通算により所得税・住民税を減らせます。相続税対策としても有効で、実物不動産は時価の60~70%程度で評価されます。
デメリットは、初期資金のハードルが極めて高い点です。最低でも500万円、本格的に始めるなら1,000万円以上の自己資金が必要です。
管理の手間と責任も重い負担で、時間と労力がかかります。流動性の低さは危機時に致命的で、売却に3~6ヶ月かかり、急な資金需要に対応できません。空室リスクと個別物件リスクも無視できません。
REITのメリット・デメリット
REITの最大のメリットは、少額から投資できる参入障壁の低さです。10万円程度から始められ、複数銘柄への分散投資も容易です。管理負担が実質ゼロである点も重要で、物件管理はすべてプロが行い、投資家は分配金を受け取るだけです。
高い流動性により、いつでも換金できる安心感があります。プロによる分散投資効果も見逃せません。1つのREITで数十~数百の物件に間接投資でき、個別物件リスクが分散されます。
デメリットは、個人投資家レベルでのレバレッジが効かない点で、投資額=自己資金となるため、実物不動産のような高い自己資金利回りは期待できません。
市場価格の変動リスクがあり、株式市場と連動して日々価格が変動します。特に金利上昇局面では借入コストが増加し分配金が減少する可能性があります。また、景気後退時には賃料収入の減少やテナント退去により、REITの価格が大きく下落するリスクもあります。
税制優遇が限定的で、減価償却や損益通算は利用できず、相続税対策の効果もありません。
あなたに合うのはどっち?投資家タイプ別診断
REITが向いている人
投資初心者は間違いなくREITから始めるべきです。少額から始められ、失敗しても損失は限定的で、不動産投資の仕組みを学びながら実践できます。まずは10万~30万円程度のREITで経験を積み、不動産投資への理解を深めてから実物不動産を検討しても遅くありません。
忙しい会社員にもREITが最適です。本業に集中したい方、時間的余裕がない方にとって、管理負担が実質ゼロであることは何物にも代えがたいメリットです。資金が100万円未満の方は、現実的にREIT一択となります。
流動性を重視する方、リスクを抑えたい保守的な投資家にもREITが向いています。
実物不動産投資が向いている人
資金的余裕がある方、具体的には1,000万円以上の余裕資金があり、長期間動かす予定がない資金を持つ方には、実物不動産投資の選択肢が開けます。
不動産経営に時間を割ける方、副業として不動産経営に取り組む時間的余裕がある方、将来的に不動産業を本業にしたい方には、実物不動産投資の経験が貴重な財産となります。
レバレッジ効果を狙いたい積極的投資家、自己資金利回り10%以上を目指したい方、借入リスクを理解し受け入れられる方は、実物不動産投資のレバレッジ効果を活用できます。
税制優遇を活かしたい高所得者、年収1,000万円以上で節税ニーズが高い方、減価償却による損益通算を活用したい方には、実物不動産の税制メリットが効果を発揮します。
併用戦略も有効
両者を併用する戦略も非常に有効です。資金の70%をREITで運用し流動性と分散を確保しつつ、30%で実物不動産投資に挑戦する方法があります。
まずREITで不動産投資を学び資金を増やし、十分な知識と資金が貯まってから実物不動産に挑戦するステップアップ戦略も賢明です。
失敗しないための5つのチェックポイント
1. 資金計画の徹底
実物不動産投資で最も多い失敗は、資金計画の甘さです。物件価格だけでなく、取得費用(物件価格の7~10%)、運営費用(年間家賃収入の20~30%)、修繕積立金、空室期間の予備費まで含めた総合的な資金計画が必要です。
特に注意すべきは、空室率を楽観視しないことです。年間15~20%の空室率を想定し、それでも黒字になるか確認しましょう。
2. 立地とエリア選定
実物不動産投資では「立地が全て」と言っても過言ではありません。駅徒歩10分以内が基本条件で、大学や大企業の近くなど、賃貸需要が見込めるエリアを選びましょう。
人口動態の確認も欠かせません。人口減少が進むエリアは将来的に賃貸需要が減り、出口戦略が描けなくなります。
3. 利回りの正しい理解
表面利回りに騙されないことが重要です。広告の利回りは満室想定の表面利回りで、実質利回りを自分で計算し、年間経費を差し引いた実質的な収益を把握しましょう。
新築プレミアムにも注意が必要で、新築時の家賃は相場より1~2割高く設定されていることが多く、2回目以降の入居者では家賃が下がります。
4. 分散投資の徹底
REITでは最低3セクター以上に分散しましょう。オフィス、住宅、物流など異なるセクターに投資することで、特定セクターの不調をカバーできます。
コロナ禍でホテルREITが大打撃を受けた一方、住宅や物流REITは堅調だったことが、分散投資の重要性を証明しています。
5. 出口戦略の確認
実物不動産投資では、購入前に売却シミュレーションを行いましょう。10年後、20年後の物件価値はどうなるか、築年数が経過した際の売却価格を現実的に見積もります。
最悪のシナリオも想定し、空室が続いた場合、金利が上昇した場合、それでも保有し続けられるか、損切りラインはどこかを事前に決めておくことが重要です。
2024-2025年、今始めるならどちらを選ぶべきか
現在の最大の変化は金利環境です。日銀の金融政策正常化により、変動金利は1.5~2.5%から2.0~3.0%へ、固定金利は2.0~3.5%から2.5~4.0%へ上昇する見込みです(出典:日銀金融経済月報2024年9月号)。
この金利上昇は実物不動産投資に大きな影響を与えます。ローン返済額が増加し、キャッシュフローが悪化します。例えば、2,000万円を30年返済で借りた場合、金利1.5%なら月々約6.9万円ですが、金利3.0%になると約8.4万円に増加します。
一方、REITへの影響は実物不動産ほど深刻ではありません。REITも借入コストが増加しますが、長期金利が1.5%程度に対してJ-REIT平均配当利回りは4.2%であり、3%程度のスプレッドは維持されています。相対的な利回りの魅力は保たれています。
2024-2025年の結論としては、金利上昇局面ではREITの相対的魅力が高まっており、初心者はREIT、経験者もREITと実物不動産の併用でリスク分散を図るべきです。実物不動産投資を新規で始めるなら、金利リスクを十分に織り込んだ保守的な収支計画が不可欠となります。
まとめ:賢い選択で資産形成を成功させる
実物不動産投資とREIT、どちらが優れているということはありません。それぞれに明確なメリットとデメリットがあり、投資家の状況によって最適な選択は変わります。
実物不動産投資は、資金力があり、時間的余裕があり、レバレッジ効果を活かして積極的に資産を増やしたい方に向いています。税制優遇や相続税対策も活用でき、不動産経営を通じて実務的な知識とスキルを身につけられます。ただし、初期資金、管理の手間、流動性の低さというハードルがあり、金利上昇リスクも無視できません。
REITは、初心者、少額投資家、忙しい会社員、流動性を重視する方に最適です。数万円から始められ、管理の手間は実質ゼロ、いつでも換金できる柔軟性があります。プロによる分散投資効果でリスクを抑えながら、4%前後の配当利回りを期待できます。
成功の鍵は、自分の状況を冷静に分析し、無理のない範囲で投資することです。資金的余裕、時間的余裕、リスク許容度、投資目的を明確にし、それに合った選択をしましょう。両者を併用してリスク分散を図るのも賢明な戦略です。
不動産投資は長期戦です。焦らず、学び続け、着実に資産を増やしていく姿勢が、最終的な成功につながります。

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