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iDeCo・NISA制度改正解説:令和7年度税制改正で変わる個人の資産形成

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iDeCo・NISA制度改正解説

はじめに:個人の資産形成を大きく変える制度改正

結論から言うと、令和7年度税制改正により個人の資産形成環境は大幅に改善されます。

特にiDeCoについては拠出限度額の大幅引き上げと加入年齢の延長が決定し、NISAについても年齢制限撤廃に向けた検討が本格化しています。

閣議決定された令和7年度税制改正大綱では、「資産運用立国」実現に向けた重要な制度改正が盛り込まれました。

これらの変更は、多様な働き方が広がる現代社会において、より多くの人がより長期間にわたって効率的に資産形成を行えるようにするものです。

ただし、これらの改正内容はあくまで大綱段階であり、本決定ではありません。

今後の国会審議や詳細設計により変更される可能性があることを念頭に置きながら、現時点での改正内容とその影響を詳しく解説します。

iDeCo制度改正の全体像

令和7年度税制改正におけるiDeCo関係の改正は、拠出限度額の大幅引き上げ、加入年齢の延長、退職所得控除の変更という三つの大きな柱から構成されています。

拠出限度額の大幅引き上げでは、第二号被保険者(会社員・公務員)について企業年金との合計で月額5.5万円から6.2万円へ、第一号被保険者(自営業者等)について月額6.8万円から7.5万円への引き上げが予定されています。

加入年齢の延長については、現行65歳未満から70歳未満への引き上げが検討されており、人生100年時代により長期間の資産形成が可能となります。

一方で退職所得控除の変更として、一時金受取時の「5年ルール」が「10年ルール」に変更される予定で、受取戦略の見直しが必要になります。

これらの改正により、iDeCoは従来以上に魅力的な老後資産形成制度となる一方、受取時の税制面では注意が必要な変更も含まれています。

拠出限度額引き上げの詳細とインパクト

被保険者区分別の変更内容

第一号被保険者である自営業者・フリーランス・学生については、現行の月額6.8万円(年額81.6万円)から月額7.5万円(年額90万円)へと、月額7,000円(年額8.4万円)の増加となります。

第二号被保険者である会社員・公務員については、企業年金制度の有無により、これまで大きな格差がありましたが、今回の改正で統一されます。

企業年金なしの会社員は月額2.3万円から6.2万円へと約2.7倍に、企業年金ありの会社員は実質的に月額2万円から6.2万円へと3.1倍に、公務員は月額1.2万円から2万円(2024年12月)を経て6.2万円へと2.7倍に増加します。

この変更により、勤務先の企業年金の有無による格差が縮小されることになります。ただし、穴埋め型の引き上げであるため、企業年金加入者については企業型DC・DB掛金分を控除した残りがiDeCo拠出可能額となります。そのため完全に「同一条件」となるわけではない点に注意が必要です。

税制優遇効果の拡大

年収500万円の会社員(企業年金なし)が改正後の上限まで拠出した場合を想定してみましょう。

拠出額は月額6.2万円(年額74.4万円)となり、所得税軽減が約7.4万円(税率10%の場合)、住民税軽減が約7.4万円で、年間節税効果は約14.8万円となります。

これを25年間継続した場合の累計節税効果は約370万円に達します。

従来の拠出限度額(月額2.3万円)での節税効果が年間約5.5万円だったことを考えると、節税効果は約2.7倍に拡大することになります。

この節税効果の拡大は、特に現在企業年金制度のない会社で働く人にとって大きなメリットとなるでしょう。

加入年齢延長が意味するもの

現在のiDeCo加入年齢は、第一号被保険者が60歳未満、第二号被保険者が65歳未満、第三号被保険者が60歳未満、国民年金任意加入被保険者が65歳未満となっています。

これが今回の改正により、60歳以上70歳未満への対象拡大が一定要件付きで検討されています。

具体的には「iDeCoの加入者・運用指図者だった方」または「私的年金の財産をiDeCoに移換できる方」などの要件を満たす場合に、70歳未満まで加入が可能になる予定です。

この延長により可能となる追加拠出期間は、第一号被保険者と第三号被保険者で10年間、第二号被保険者で5年間となります。

人生100年時代において、定年退職後も働き続ける人が増える中で、より長期間の資産形成が可能となることは、老後資金準備における大きなアドバンテージとなります。

具体的なインパクトを見てみると、60歳で定年退職後も働き続ける会社員の場合、65歳から70歳までの5年間で追加拠出可能額は月額6.2万円×12ヶ月×5年で372万円となります。

この期間の節税効果を年収300万円と仮定して計算すると約74万円となり、運用収益を含めれば老後資金を大幅に増強することが可能です。

退職所得控除「10年ルール」への変更

現行制度と改正内容

現在は、iDeCoを一時金で受け取った後、5年以上間隔を空けて退職金を受け取れば、それぞれに退職所得控除を適用できます。

例えば、60歳でiDeCo一時金を受け取り、65歳で退職金を受け取る場合、両方に退職所得控除が適用可能でした。

しかし、改正後は10年以上の間隔が必要となります。

つまり、60歳でiDeCo一時金を受け取った場合、70歳で退職金を受け取るなら両方に適用可能ですが、65歳で退職金を受け取る場合は退職所得控除が重複期間分減額されることになります。

この変更は2026年1月1日以降に支払われる退職一時金から適用される予定です。

対応策の検討

この変更に対する対応策として、受取時期の調整が考えられます。

iDeCoを先に受け取り、退職金受取を10年後に設定することで、両方の退職所得控除を活用できます。ただし、これは70歳まで働ける環境がある場合に限られます。

また、年金形式での受取選択も有効な対応策です。

iDeCoを年金形式で受け取ることで公的年金等控除を活用し、一時金受取時の税負担を回避することができます。

さらに、一部を一時金、残りを年金形式で受け取る組み合わせ受取により、税負担を分散化することも可能です。

NISA年齢制限撤廃の検討状況

現行制度の制限

現在のNISAは18歳以上が対象となっており、利用する年の1月1日時点で満18歳以上でなければなりません。

2023年末でジュニアNISAが廃止されたため、現在は18歳未満の人はNISA制度を利用できない状況となっています。

金融庁の検討内容

金融庁は現在、18歳未満でも利用可能な新たなNISA制度の創設を検討しています。

これは「こどもNISA」(仮称)と呼ばれ、18歳未満の未成年者を対象として、早期からの金融教育と資産形成習慣の定着を目的としています。

実施時期については、2026年度税制改正要望への盛り込みが検討されている状況です。

同時に、高齢者向けの特別なNISA制度である「プラチナNISA」の検討も進められています。

これは毎月分配型投資信託を対象化し、高齢者の計画的な資産活用をサポートすることを目的としており、資産の取り崩し段階での税制優遇を提供する構想です。

検討段階であることの重要性

ただし、これらの制度はまだ検討段階であることを理解しておくことが重要です。

具体的な制度設計は未確定で、実施時期も明確ではありません。

パブリックコメント等を経て最終決定される予定のため、現時点では既存のNISA制度を最大限活用することが重要となります。

制度改正の背景と個人への影響

人生100年時代への対応

これらの制度改正の背景には、人生100年時代への対応があります。

70歳までの就業機会確保制度の導入や多様な働き方への対応が進む中で、現役期間の延長に伴う資産形成期間の拡大ニーズが高まっています。

また、公的年金の受給開始年齢が75歳まで選択可能となったことを受け、私的年金制度との制度的整合性を確保する必要性も指摘されています。

国際的な競争力向上の観点でも、米国の401(k)制度の年額約300万円の拠出限度額や、英国の企業年金制度の拠出限度額段階的引き上げなど、諸外国との制度比較において、日本の制度改正は国際水準への接近を目指しています。

家計への具体的影響

30歳会社員(企業年金なし)のケースで見ると、改正前の資産形成では、iDeCo拠出月額2.3万円×30年で828万円、年間節税約5.5万円×30年で165万円、運用収益(年率3%想定)約347万円で総額約1,340万円となっていました。

改正後は、iDeCo拠出月額6.2万円×35年(70歳まで)で2,604万円、年間節税約14.8万円×35年で518万円、運用収益(年率3%想定)約1,377万円で総額約4,499万円となり、改正による効果は約3.4倍の資産形成効果を期待できます。

注意すべきポイントと対応策

制度利用時の注意点

iDeCo制度利用時には、原則60歳まで引き出し不可という流動性の制約があります。

生活資金とのバランス考慮が必要で、家計の余裕資金での拠出が原則となります。

拠出額増加に伴う運用リスクの拡大にも注意が必要で、分散投資の重要性や年齢に応じた資産配分の見直しが求められます。

また、10年ルール導入による受取時の税負担増加リスクがあるため、受取方法の事前検討と退職金制度の確認が重要となります。

制度活用の最適化戦略

効果的な制度活用のためには、いきなり上限まで拠出せず段階的に増額し、家計への影響を確認しながら調整することが重要です。

他の資産形成手段とのバランスも考慮する必要があります。

NISAとの併用戦略も重要で、iDeCoは所得控除、NISAは運用益非課税という特徴を活かし、年齢・収入・家計状況に応じて使い分けることで、流動性を考慮した資産配分が可能となります。

制度改正情報の継続的な収集と年1回程度の拠出戦略見直し、必要に応じた専門家への相談も検討すべきポイントです。

まとめ:変化する制度を活用した資産形成戦略

令和7年度税制改正におけるiDeCo制度の改正は、個人の老後資産形成を大きく変える可能性を秘めています。

拠出限度額の大幅引き上げによる節税効果の拡大、加入年齢延長による長期資産形成の実現、企業年金制度による格差の解消といった大きなメリットがある一方で、退職所得控除の10年ルール導入、運用リスクの拡大、流動性制約の継続といった注意が必要な変更も含まれています。

NISAについては年齢制限撤廃は検討段階であり、現行制度の最大限活用が重要です。将来的な制度拡充への期待はあるものの、まずは利用可能な制度を確実に活用することが賢明でしょう。

今後の対応方針として、制度改正の詳細情報や実施時期の確定を待ちながら情報収集を継続し、改正を待つのではなく現在利用可能な制度を最大限活用することが重要です。

iDeCo、NISA、その他の投資手段を組み合わせた総合的な資産形成戦略を構築し、複雑化する制度について必要に応じて専門家のアドバイスを求めることも検討すべきでしょう。

人生100年時代において、早期からの計画的な資産形成がより重要になっています。制度改正により選択肢が広がる一方、その活用方法も複雑化しています。

自身のライフプランと家計状況を踏まえ、最適な資産形成戦略を構築することが、豊かな老後生活への第一歩となるでしょう。

重要な留意事項: 本記事の内容は2024年12月時点での税制改正大綱に基づいており、最終的な制度内容は国会審議等を経て確定されます。実際の制度利用時には、最新の正式な制度内容をご確認ください。

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