1. なぜ「買い増しルール」を先に決めておくのか
正直に告白します。私自身、この記事で紹介する戦略で、次の暴落時にVYMを買い増す予定です。
投資で最も難しいのは、暴落時に冷静な判断を下すことです。
暴落時に人は判断を誤りやすい
株価が20%下落したとき、あなたはこう思うかもしれません。「もっと下がるかもしれない。もう少し様子を見よう」。そして25%下落したときには「もう手遅れだ。ここから買っても戻らないかも」と感じてしまう。
この心理の罠から逃れる方法はひとつ。事前にルールを決めておくことです。
「今はまだ早い/もう遅い」を排除するためのルール化
人間の脳は不確実性に弱くできています。だからこそ、感情が入り込む余地をなくす必要があります。
- 「20%下落したら○○ドル買う」
- 「25%下落したら○○ドル買う」
- 「30%下落したら○○ドル買う」
これだけを決めておけば、相場を見ながら悩む必要はありません。
感情ではなく数値で動く意味
株価が大きく下落しているとき、ニュースは悲観的な見出しで溢れます。SNSでは「まだ下がる」「終わりだ」という声が飛び交います。
そんな中で買い向かうには、数値という絶対的な基準が必要です。感情を排除し、機械的に実行できる設計こそが、下落相場を味方につける最大の武器になります。
これは私自身の経験から学んだことです。
過去の暴落時、「もう少し様子を見よう」と思っているうちに底を打ち、気づいたときには買い時を逃していました。暴落が起こってから「どうしよう」と考え始めても、もう遅いのです。
だからこそ、今この瞬間に、冷静に戦略を組み立てておく。この記事を書いている理由もそこにあります。
2. 今回の前提条件(かなり現実的なケース)
この戦略を考える上で、以下の前提を置いています。
余裕資金であること
これから投入する資金は、生活費や緊急予備資金とは別に確保されたお金です。数年単位で動かす予定のない資金だからこそ、下落時に焦らず待つことができます。
米ドル建てで資金を保有している理由
VYMは米国ETFなので、購入時に為替コストがかかります。今回はすでに米ドルで保有している資金を前提としています。円からの両替タイミングを気にする必要がないため、戦略がシンプルになります。
一括投資ではなく、あえて3回に分ける理由
「下落相場でまとめて買えばいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、底を当てることは不可能です。
3回に分けることで:
- どこかで必ず買える
- 平均取得単価が安定する
- 精神的な余裕が生まれる
完璧を目指さず、現実的に実行可能な設計にすることが重要です。
3. なぜVYMは「下落時の買い増し」と相性がいいのか
すべての銘柄が下落時の買い増しに向いているわけではありません。VYMには、この戦略と相性の良い3つの特徴があります。
値動きが比較的マイルド
VYMは400銘柄以上に分散された高配当ETFです。個別株やレバレッジETFと比べて値動きが穏やかなため、30%の下落でも「暴落寄り」という水準です。
逆に言えば、20〜30%のレンジ設定が現実的に機能するということです。
配当をもらいながら待てる安心感
下落後、株価が戻るまで時間がかかることもあります。しかしVYMなら、その間も配当を受け取り続けることができます。
年率3%前後の配当利回りは、含み損を抱えている間の「心理的支え」になります。
長期保有前提だからこそ下落を活かせる
VYMは短期売買で利益を狙うタイプの商品ではありません。10年、20年と保有することを前提とするなら、下落は安く買い増すチャンスでしかありません。
長期目線があるからこそ、この戦略は機能します。
4. ドローダウン基準は「20・25・30%」で十分
では、具体的にどの水準で買い増すべきか。今回は**20%・25%・30%**という3段階を設定します。
明確な調整(20%下落)
一般的に「弱気相場入り」とされる水準です。ニュースでも「株価急落」といった見出しが並び始めます。
ここが買い増しのスタートラインです。軽い調整(10〜15%)は見送り、本格的な下落が確認できてから動くという考え方です。
本格的な下落(25%下落)
20%を超えて、さらに下落が続いた状態です。市場心理はかなり悪化しており、「底が見えない」という声が増えてきます。
ここから買い増しを加速させます。
暴落レベル(30%下落)
コロナショック級の下落に相当します。市場は恐怖に包まれ、多くの人が売りに走るタイミング。
ここで最も多く買うことで、平均取得単価を大きく引き下げます。
過去の相場感から見て”現実的なライン”である理由
過去10年を振り返ると、VYMは以下のような下落を経験しています:
- コロナショック(2020年):約30%下落
- 2022年の調整局面:約20%下落
- その他の年:10〜15%の調整は複数回
20%以下の調整は比較的頻繁に起こりますが、あえて20%から買い始めることで、より確実な下落局面で資金を投入できます。
5. 逆ピラミッティングという考え方
通常の「ドルコスト平均法」では、毎回同じ金額を投入します。しかし今回の戦略は、下落幅が大きいほど多く買うという逆ピラミッティングの発想です。
なぜ下がるほど多く買うのか
理由はシンプルです。安いときほど、同じ資金でより多くの株数を買えるから。
20%下落で少額だけ買い、30%下落で大きく買うことで、最も割安なタイミングで多くの株を仕込むことができます。
均等買いとの違い
仮に3回とも同額ずつ買った場合と比較してみましょう。
| 戦略 | 20%下落 | 25%下落 | 30%下落 |
|---|---|---|---|
| 均等買い | 33% | 33% | 33% |
| 逆ピラミッティング | 20% | 30% | 50% |
逆ピラミッティングでは、最も安い30%下落時に半分の資金を投入します。
平均取得単価がどう変わるか
結果として、平均取得単価は均等買いよりも低くなります。これは、安い価格帯でより多くの株数を購入しているためです。
下落幅が大きいほど効果が顕著になる、攻めの戦略と言えます。
6. 今回の逆ピラミッティング買い増しプラン(具体例)
ここからは具体的な数値を使って、実際の買い増しプランを設計します。
前提条件
- 保有資金:10,840ドル
- 現在株価:$146.76(基準価格)
- 買い増し回数:3回(20%・25%・30%下落時)
この資金を、下落幅に応じて**20%・30%・50%**の比率で分配します。
6-1. 第1回:20%下落での買い増し
目標株価
- 20%下落時の株価:$117.41(約117ドル)
投資額・配分比率
- 投資額:2,168ドル(全体の20%)
- この段階の目的:「本格的な下落の確認と初期ポジション構築」
株数目安
- 購入可能株数:約18株
- 平均取得単価:$117.41
20%下落で弱気相場入りが確認できた段階で、まず控えめに参入します。
6-2. 第2回:25%下落での買い増し
なぜここから本格投入か
25%下落は、「一時的な調整」ではなく、深刻な下落局面であることが明確になった段階です。多くの投資家が恐怖を感じ始めますが、だからこそチャンスです。
投資額・配分比率
- 25%下落時の株価:$110.07(約110ドル)
- 投資額:3,252ドル(全体の30%)
株数が一気に増える理由
- 追加購入株数:約30株
- 累計保有株数:48株(18株+30株)
- 累計平均取得単価:約$113.10
ここで株数を一気に増やすことで、その後の株価回復時のリターンが大きくなります。
6-3. 第3回:30%下落での本命買い
「怖いところで買う」ための事前設計
30%下落は、多くの投資家が恐怖を感じるレベルです。ニュースは悲観一色、SNSでは「もっと下がる」という声が支配的になります。
しかし、ここで最も大きく買うことが、この戦略の核心です。
正直に言います。このタイミングで買うのは、怖いです。
30%も下がっている株を見て、「まだ下がるかもしれない」「ここで買って大丈夫か?」という不安が頭をよぎるはずです。
でも、だからこそ事前にルールを決めておくのです。その瞬間の感情に負けず、機械的に実行する。怖くても、決めたとおりに動く。
それができるかどうかが、長期投資の成否を分けます。
投資額・配分比率
- 30%下落時の株価:$102.73(約103ドル)
- 投資額:5,420ドル(全体の50%)
最後に残した資金の意味
- 追加購入株数:約53株
- 最終的な累計株数:101株(18+30+53株)
- 最終的な平均取得単価:約$107.33
30%下落時に半分の資金を投入することで、平均取得単価を大きく引き下げることができます。
7. このプランのメリット・デメリット
どんな戦略にも、長所と短所があります。ここでは正直にお伝えします。
メリット
悩まない
株価を見ながら「今買うべきか?」と迷う必要がありません。数値に到達したら機械的に実行するだけです。
ブレない
周囲の意見やニュースに左右されません。あらかじめ決めたルールに従うだけなので、誰かの意見で判断が変わることもありません。
下落を味方にできる
普通の投資家が恐怖を感じる場面こそ、あなたにとってはチャンスです。暴落時に「ラッキー、安く買える!」と思える心理状態を作れます。
軽い調整に巻き込まれない
20%以下の調整は見送ることで、本当に意味のある下落局面だけで資金を投入できます。
デメリット
30%下落が来ない可能性
もし株価が20%下落で反転し、そのまま上昇した場合、手元に資金が残ります。これは「機会損失」と感じるかもしれません。
一時的な含み損は避けられない
買い増し後、さらに下落が続く可能性もあります。その場合、一時的に含み損を抱えることになります。
ただし、長期保有前提なら、含み損は一時的な数字に過ぎません。
小さな調整では買えない
10〜15%程度の調整では資金を投入しないため、「ちょっと安く買える」という機会は逃すことになります。
8. もし30%まで下がらなかった場合はどうするか
「30%下落まで資金を残したのに、実際には20%で反転してしまった」——このケースは十分に起こりえます。
20%・25%で反転した場合
この場合、手元には未使用の資金が残ります。
選択肢は2つ:
- 次の下落機会まで待つ:長期目線なら、数年以内に再び下落局面は来ます
- 別の投資先に振り分ける:VYM以外の銘柄やETFに投資する
ルールを変えないという選択
重要なのは、「やっぱり今買っておこう」とルールを破らないことです。
ルールを破ると、次回以降の判断基準が曖昧になります。機会損失を恐れるよりも、再現性のある戦略を維持することの方が重要です。
「機会損失」とどう向き合うか
機会損失は、投資において避けられません。完璧なタイミングで買うことは不可能だからです。
大切なのは、「最高のタイミング」ではなく「十分に良いタイミング」で買うこと。そして、そのタイミングを事前に決めておくことです。
9. 実際にやるならここだけ決めておけばいい
最後に、この戦略を実行するために決めるべきポイントをまとめます。
基準株価はどれを使うか
- 今日の終値を基準にするのがシンプルです
- 「直近高値から○%下落」という考え方もありますが、複雑になりがちです
- 一度決めたら変えないことが重要
指値で置くか、到達後に成行か
指値注文のメリット
- 目標価格に達したら自動で買える
- 相場を見続ける必要がない
成行注文のメリット
- 確実に約定する
- 一時的な値動きに左右されない
個人的には、到達を確認してから成行注文を推奨します。指値だと「あと数セント足りず約定しなかった」という事態が起こりえます。
ルールを更新するタイミング
基本的には、一度決めたら1年間は変更しないことをおすすめします。
ただし、以下の場合は見直しを検討してもOKです:
- 保有資金が大きく変動した場合
- ライフステージが変わった場合(退職、転職など)
- 全3回の買い増しが完了した後
10. まとめ:これくらいの目安で”十分”
投資において、完璧を求める必要はありません。
完璧な底当ては不要
誰も底値を当てることはできません。プロのファンドマネージャーですら、毎回底値で買うことは不可能です。
だからこそ、「十分に安い水準で買えた」と納得できる基準を持つことが重要です。
大事なのは再現性
今回の戦略は、次の下落局面でも、その次でも使えます。
再現性のある戦略を持つことで、相場に振り回されず、自分のペースで投資を続けられるようになります。
感情を排除できる設計こそが最大の武器
最後にもう一度、この戦略の核心を確認しましょう。
- 20%・25%・30%という明確な基準
- 20%・30%・50%という逆ピラミッティング配分
- 事前に決めたルールを機械的に実行する
これだけで、暴落時の「どうしよう」という迷いから解放されます。
感情を排除し、数値に基づいて動く。シンプルですが、これが長期投資における最大の武器です。
そして最後に、私自身への戒めも込めて。
決めたら、怖くても機械的に入れる。周りが恐怖に支配されているときこそ、淡々とルールを実行する。それができれば、暴落は最高のチャンスに変わります。
この記事を書いた今、私もその覚悟を決めました。次の暴落が来たとき、一緒に冷静に行動しましょう。
免責事項:この記事は投資戦略の一例を紹介するものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。市場環境や個人の状況により、最適な戦略は異なります。
コメント