失敗談:絶好の投資機会に金投資をしていたけど、即やめた件

失敗談:絶好の投資機会に金投資をしていたけど、即やめた件
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はじめに|今回は「判断は間違っていなかったが、結果は失敗だった話」

投資の世界には、二種類の「失敗」があります。

一つは、間違った判断をして損失を出す失敗。これは誰もが避けたい、典型的な失敗です。もう一つは、正しい判断をしたのに利益を逃す失敗。実はこちらの方が、心理的にはダメージが大きいかもしれません。

今日お話しするのは、まさに後者の失敗談です。

2020年春、世界がパンデミックの混乱に包まれていた頃、私は金(ゴールド)関連の投資商品を購入しました。当時の市場環境を冷静に分析すれば、それは理にかなった判断でした。実際、私が売却した後、金価格は驚くべき上昇を見せました。

もしあのまま保有し続けていたら、円建てで約3倍、ドル建てでも約7割増しのリターンを得られていたはずです。RGLDやGDXといった金鉱株関連の銘柄は、さらに大きな上昇を見せました。完全に「絶好の投資機会」だったのです。

しかし、私はわずか1か月でその投資を手放しました。

結果だけ見れば、これは大失敗です。でも不思議なことに、私はこの判断をそれほど後悔していません。むしろ、この経験から得た学びは、その後の投資人生において大きな財産になっています。

「正しい投資判断」とは何か。「自分に合った投資」とは何か。そして「後悔しない投資」とは何か。

今回は、金という絶好の投資機会を逃した私の失敗談を通じて、投資における「再現性」の重要性についてお話しします。

金投資を始めた当時の背景

時は2020年の春頃。世界はパンデミックという未曾有の危機に直面していました。

3月には株式市場が大暴落し、ダウ平均株価は1日で3,000ドル近く下落する日もありました。その後、各国政府と中央銀行による前例のない規模の財政・金融支援により、市場は急速に回復しましたが、多くの投資家は先行きに大きな不安を抱えていました。

当時の投資環境を振り返ると、いくつかの特徴的な状況がありました。

まず、実体経済と株式市場の乖離が著しく拡大していました。失業率は急上昇し、多くの企業が営業停止を余儀なくされているにもかかわらず、株価は政府の資金供給によって支えられていました。「これは本当に健全な上昇なのか」という疑問が、市場全体に漂っていたのです。

次に、インフレへの懸念が高まっていました。各国中央銀行は大規模な金融緩和を実施し、市場には膨大な資金が供給されていました。経済学の教科書通りに考えれば、これだけの通貨供給はいずれインフレを引き起こすはずでした。

さらに、地政学的なリスクも増大していました。米中関係の悪化、サプライチェーンの混乱、各国の保護主義的な動き。グローバル化が後退し、世界が分断に向かっているように見えました。

こうした「三重の不安」の中で、多くの投資家が注目していたのが金でした。

金は数千年にわたって価値の保存手段として認められてきた実物資産です。紙幣のように政府が勝手に発行量を増やすこともできません。株式のように企業の業績に左右されることもありません。まさに「有事の金」という言葉がぴったりの状況でした。

私自身、当時は米国高配当株を中心にポートフォリオを組んでいましたが、全体的なリスク分散を考えていました。高配当株への投資は続けるとしても、何か異なる性質の資産も持つべきではないか。そう考えたとき、最も魅力的に映ったのが金だったのです。

実際、金価格は上昇トレンドにありました。2019年末には1オンス1,500ドル程度だったのが、2020年春には1,700ドルを超えていました。チャートを見れば、明らかな上昇トレンドが形成されていました。

「今買っておけば、さらなる上昇が期待できるのではないか」

そう考えた私は、金関連投資に踏み出すことを決めました。

実際に買った銘柄と購入価格

金投資といっても、いくつかの方法があります。金地金を直接購入する方法、金ETFを買う方法、そして金鉱株に投資する方法です。

私が選んだのは、金鉱株への投資でした。具体的には、RGLD(Royal Gold)とGDX(VanEck Gold Miners ETF)の2銘柄です。

なぜ金地金やGLDのような金ETFではなく、金鉱株を選んだのか。それは「レバレッジ効果」を期待したからです。金鉱株は金価格の上昇に対して、より大きな値動きをする傾向があります。金価格が10%上昇すれば、金鉱株は15%や20%上昇することも珍しくありません。

RGLDは、金鉱山会社にロイヤリティ(採掘権料)を支払わせる代わりに資金を提供するビジネスモデルの企業です。実際に鉱山を運営するわけではないので、採掘コストの変動リスクが低く、金価格の上昇メリットを直接享受できる構造になっています。「金価格が上がれば、確実に利益が増える」というシンプルなビジネスモデルに魅力を感じました。

GDXは、世界中の金鉱株に分散投資するETFです。単一銘柄のリスクを避けつつ、金鉱株セクター全体の上昇を取り込めます。RGLDとGDXを組み合わせることで、ある程度のリスク分散を図りました。

購入価格は、正確な記録が手元にないのですが、RGLDは100ドル台半ば、GDXは30ドル台だったと記憶しています。投資額は、ポートフォリオ全体の10%程度。「様子見」という位置づけでした。

購入後、しばらくは順調でした。金価格は上昇を続け、私の保有銘柄も着実に値を上げていきました。「やはり判断は正しかったようだ」と、少し得意な気持ちになったことを覚えています。

しかし、その「順調さ」が、実は私にとって最大の問題だったのです。

わずか1か月で売却した理由

購入から約1か月後、私は金関連の投資をすべて売却しました。

理由は単純明快でした。「これは自分の投資スタイルではない」と気づいたからです。

きっかけは、ある日の夜、ポートフォリオ全体を眺めていたときでした。配当金の入金予定を確認しながら、ふと違和感を覚えたのです。

私の米国株ポートフォリオからは、毎月のように配当金が入金されていました。ABBV(アッヴィ)、PM(フィリップ・モリス)、VYM(バンガード・米国高配当株式ETF)、XOM(エクソンモービル)。これらの銘柄は、保有しているだけで定期的にキャッシュフローを生み出してくれます。

一方、金はどうか。

いくら値上がりしようと、保有している限り1円のキャッシュフローも生み出しません。配当もなければ、利息もありません。ただ「誰かがもっと高い値段で買ってくれること」を期待して保有し続けるだけです。

これは、私が投資において最も重視していた「インカムゲイン」の思想と、根本的に相容れないものでした。

私が投資を始めた動機は、「働かなくてもお金が入ってくる仕組みを作りたい」というものでした。配当金という形で、定期的にキャッシュフローが得られる。それが私にとっての投資の本質だったのです。

もちろん、キャピタルゲイン(値上がり益)も重要です。でも、それは副次的なものであって、主目的ではありませんでした。「今日売らなければ利益にならない」という投資は、どうしても落ち着かない。常に「いつ売るべきか」を考え続けなければならない。

金投資は、まさにそういう投資でした。

さらに問題だったのは、「売却タイミング」を判断する基準がないことでした。

株式投資なら、企業の業績、配当政策、業界の成長性など、様々な指標を基に投資判断ができます。PERやPBRといったバリュエーション指標もあります。「この企業は割安だ」「割高だ」という判断基準が、一応は存在します。

でも、金にはそれがありません。

金の「適正価格」とは何でしょうか。1オンス2,000ドルが適正なのか、3,000ドルが適正なのか。誰にもわかりません。需給と市場の期待だけで価格が決まる世界です。

つまり、金投資は「誰かがもっと高く買ってくれることを期待するゲーム」だったのです。これは、私が最も苦手とする投資スタイルでした。

チャートを見て、「そろそろ天井かもしれない」「いや、まだ上がるかもしれない」と悩む日々。それは私にとって、精神的に大きなストレスでした。

そして気づいたのです。「これは私の投資ではない」と。

投資には、様々なスタイルがあります。短期トレードで稼ぐ人もいれば、成長株に賭ける人もいます。それぞれに正解があるでしょう。でも、少なくとも私にとって、金投資は「正解」ではありませんでした。

売却を決めたとき、わずかですが含み益が出ていました。「もう少し待てば、もっと利益が出るかもしれない」という誘惑もありました。

でも、私は売却しました。

なぜなら、「自分に合わない投資で利益を出しても、それは再現性がない」と理解していたからです。

売却後に起きた現実

売却から数週間後、金価格は上昇を続けました。

2020年8月には、金価格は1オンス2,000ドルの大台を突破。私が売却した価格から、約20%の上昇でした。「ああ、もう少し待てばよかった」という後悔の念が、正直、頭をよぎりました。

でも、本当の「たられば」は、そこからでした。

2020年から2025年にかけて、金価格は驚異的な上昇を見せたのです。2025年末には、金価格は1オンス2,600ドルを超え、一時は2,900ドル台に到達しました。私が売却した価格(約1,700ドル)から計算すると、ドル建てで約70%の上昇です。

さらに衝撃的だったのは、円建ての金価格でした。

2020年当時、1グラムあたり約6,000円台だった金価格は、2025年12月には25,000円を超える史上最高値を記録しました。約4倍です。ドル建てと円建てでこれほど差が出たのは、この間の円安進行も大きく影響しています。

私が購入したRGLDは、2026年1月時点で約240ドル台。GDXも90ドル台まで上昇していました。もし保有し続けていたら、投資額は2倍以上、場合によっては3倍近くになっていた可能性があります。

計算してみると、ゾッとする数字でした。

仮に100万円を投資していたとすれば、それが250万円、いや300万円近くになっていたかもしれません。それだけの利益を、私は逃したのです。

「あのとき売らなければ」 「もう少し我慢すればよかった」 「なぜ自分は忍耐力がなかったのか」

そんな後悔の言葉が、何度も頭の中を駆け巡りました。

特に辛かったのは、金価格のニュースを見るたびに、「ああ、また上がっている」と思い知らされることでした。2024年、2025年と、金は次々と史上最高値を更新し続けました。そのたびに、私の中の「たられば」が大きくなっていきました。

投資の世界では、「機会損失」という言葉があります。実際にお金を失ったわけではないけれど、得られたはずの利益を逃すこと。これは、実際の損失以上に心理的なダメージが大きいと言われます。

まさに、私はその「機会損失」を経験したのです。

しかし、不思議なことに、時間が経つにつれて、この後悔はそれほど大きくなりませんでした。むしろ、「あれでよかったのかもしれない」と思えるようになったのです。

なぜか。

それは、同じ期間に私が保有し続けた米国高配当株が、着実に配当金を生み出し続けてくれていたからです。

昨今の金価格高騰をどう見ているか

2024年から2025年にかけての金価格の高騰は、確かに驚異的でした。

では、なぜ今、金がこれほど買われているのでしょうか。

主な要因は3つあると考えられます。

第一に、インフレと通貨への不安です。

2021年以降、世界的にインフレが加速しました。米国では一時、消費者物価指数(CPI)の上昇率が9%を超えました。日本でも2%を超える物価上昇が続いています。各国の中央銀行が大規模な金融緩和を行った結果、通貨の供給量が膨張し、相対的に通貨の価値が下がっているのです。

こうした状況で、「実物資産」である金に資金が流入するのは自然な流れです。紙幣は政府が印刷すれば増やせますが、金は簡単には増やせません。希少性が保たれている限り、価値の保存手段として機能し続けます。

第二に、地政学リスクの高まりです。

ウクライナ情勢、中東の緊張、米中対立。世界は2020年代に入って、かつてないほど不安定化しています。こうした「有事」の際に、投資家は安全資産である金に資金を移す傾向があります。

特に注目すべきは、米国と中国の対立が単なる貿易摩擦を超えて、通貨体制の問題にまで発展していることです。一部の国は、米ドルへの依存度を下げ、金を含む他の資産で外貨準備を分散させる動きを見せています。

第三に、そして最も重要なのが、中央銀行による組織的な金購入です。

これについては、次のセクションで詳しく説明します。この要因こそが、今回の金価格高騰を過去のバブルとは異なるものにしている可能性があるのです。

チューリップ・バブルとの比較

投資の歴史を振り返るとき、必ず登場するのが「チューリップ・バブル」です。

1637年、オランダで起きたこの事件は、世界初のバブル経済として知られています。

当時、オランダは貿易で栄え、アムステルダムには富が集中していました。そんな中、オスマン帝国からもたらされたチューリップが、富裕層の間でステータスシンボルとなりました。特に珍しい模様の入った品種が人気を集め、球根の価格が高騰していったのです。

ピーク時には、1個の球根が熟練職人の年収の10倍以上という、信じられない価格で取引されました。家が買えるほどの価値になった球根もあったと言われています。

しかし、1637年2月、ある町でチューリップが全く売れなくなるという事件が起きました。するとパニックが広がり、価格は一気に暴落。多くの人が破産しました。

このチューリップ・バブルと、今回の金価格高騰には、いくつかの共通点があります。

「行き過ぎた期待」です。

チューリップの場合、「もっと高く売れるはずだ」という期待だけで価格が釣り上げられました。金も同様に、「まだまだ上がる」という期待が価格を押し上げている側面は否定できません。

投機的な動きが増えていることです。

チューリップ・バブル時には、実際に花を愛でたいわけではなく、値上がり益だけを狙った投機家が大量に参入しました。金市場でも、実物資産としての価値よりも、「値上がり期待」で買っている投資家は少なくないでしょう。

しかし、ここからが重要なのですが、今回の金価格高騰はチューリップ・バブルとは決定的に異なる点があります。

それが、次にお話しする「国家単位の買い」という要素です。

今回は本当にバブルなのか?

「金価格はバブルだ」という意見を、私は何度も耳にしました。

確かに、短期間でこれほど上昇すれば、バブルを疑うのは当然です。でも、今回の金価格高騰には、過去のバブルとは本質的に異なる要素があります。

それは、中央銀行による組織的な金購入です。

調査によると、世界の中央銀行による金の年間購入量は、2022年から2024年にかけて3年連続で1,000トンを超えています。2024年だけで約1,086トンもの金が、各国の中央銀行によって購入されました。

これがどれほど大きな数字かというと、世界の年間金供給量が約3,400トンですから、その約3分の1が中央銀行によって買い占められていることになります。

特に積極的なのが、中国、トルコ、インド、ロシア、ポーランド、カザフスタンといった新興国の中央銀行です。

中国人民銀行は、2024年11月に金購入を再開し、2025年も継続して毎月金を買い増しています。これは単なる投資ではなく、国家戦略としての動きです。

なぜ中央銀行は金を買うのか。

理由はいくつかあります。米ドルへの依存度を下げたい、外貨準備を分散したい、米国による資産凍結リスクに備えたい、自国通貨の価値下落に対するヘッジをしたい――。

特に、2022年のロシアへの経済制裁で、西側諸国がロシアの外貨準備を凍結したことは、多くの国に衝撃を与えました。「米ドル建ての資産は、政治的な理由で凍結されるリスクがある」ことが明らかになったのです。

金は、誰にも凍結されません。没収もされません。自国で物理的に保管している限り、完全にコントロール下に置けます。

チューリップ・バブルとの決定的な違いは、ここにあります。

チューリップは、個人の投機家が「もっと高く売れる」という期待だけで買っていました。実需はありません。価格を支える基盤がないのです。

しかし金の場合、中央銀行という巨大で安定した買い手が存在します。しかも、彼らは短期的な値上がり益を狙っているわけではありません。長期的な資産保全、戦略的な外貨準備の一部として、金を積み上げているのです。

もちろん、個人投資家の中には投機的な動きをしている人もいるでしょう。でも、市場全体を見れば、「国家による構造的な需要」という、過去のバブルにはなかった強力な下支えがあるのです。

だからといって、金価格が永遠に上がり続けるわけではありません。調整局面は必ず来るでしょう。でも、「チューリップのように、ある日突然、誰も買わなくなって暴落する」という展開は、考えにくいのです。

これは、バブルというよりも、国際通貨体制の構造変化を反映した価格形成なのかもしれません。

それでも今さら買い直さないと決めた理由

金価格の上昇を見て、「今からでも買い直すべきか」と何度も自問しました。

2024年、2025年と、金価格が史上最高値を更新するたびに、その誘惑は強くなりました。「まだ上がるかもしれない」「中央銀行の買いが続く限り、下支えがある」――そう考えれば、今からでも遅くないかもしれません。

でも、私は買い直しませんでした。

理由は明確です。過去の後悔を理由に投資判断をしてはいけない、と自分に言い聞かせたからです。

「あのとき売らなければよかった」という後悔は、投資において最も危険な感情の一つです。なぜなら、それは冷静な判断を曇らせるからです。

もし今、金を買い直したとしましょう。それは「金という資産が今後も上昇する」という分析に基づいた判断でしょうか。それとも「過去に逃した利益を取り戻したい」という感情的な判断でしょうか。

正直に言えば、後者の要素が大きいはずです。

そして、感情的な判断で行った投資は、たとえ結果が良くても、長続きしません。なぜなら、明確な売却基準がないからです。

「いくらまで上がったら売るのか」 「どれくらい下がったら損切りするのか」

これらの基準を、感情的に投資した場合、設定することができません。すると、上がっても下がっても不安になり、結局、最悪のタイミングで売却してしまう可能性が高いのです。

私が金投資から撤退した本質的な理由は、「配当・利息を生まない」という点にありました。この理由は、今も変わりません。むしろ、その後の経験を通じて、より確信を深めています。

私にとって投資とは、「定期的なキャッシュフローを生み出す仕組み」です。その本質は、5年経っても変わっていません。

だから、いくら金価格が上昇しようとも、それは「私の投資」ではないのです。

自分の投資ルールを優先する。

これこそが、長期的に投資で成功するために最も重要なことだと、私は信じています。

後悔はあるが、そこまで凹んでいない理由

「200万円以上の利益を逃した」

そう計算すると、確かに心が痛みます。でも、不思議なことに、私はそこまで凹んでいません。

なぜか。

第一に、他の投資で十分な成果が出ているからです。

金を売却した後も、私は米国高配当株への投資を続けてきました。ABBV、PM、VYM、XOM――これらの銘柄は、保有期間中、着実に配当金を支払い続けてくれました。

配当金は、再投資することでさらに配当を生み出します。複利の力によって、ポートフォリオは着実に成長しました。キャピタルゲインも含めれば、この5年間のトータルリターンは決して悪くありません。

金投資で得られたはずの利益には及ばないかもしれません。でも、「安定したキャッシュフロー」という、私が最も重視する価値を手に入れました。

第二に、「取らなかったリスク」も投資の一部だと理解しているからです。

金投資から撤退したことで、私は確かに大きな利益を逃しました。でも、同時に、大きなリスクも回避したのです。

もし金を保有し続けていたら、私は毎日、金価格の変動に一喜一憂していたでしょう。「今日は上がった」「今日は下がった」「そろそろ売るべきか」「いや、まだ我慢すべきか」――そんな思考に、膨大な時間とエネルギーを費やしていたはずです。

投資において、「精神的な安定」は見過ごされがちですが、実は極めて重要です。

夜、安心して眠れるか。日中、仕事に集中できるか。家族との時間を楽しめるか。

これらは、お金では買えない価値です。

金を手放したことで、私はこの「精神的な安定」を手に入れました。それは、200万円の価値があったかもしれません。

第三に、この経験が私に貴重な学びを与えてくれたからです。

「利益を逃す」という経験は、実は「損失を出す」経験よりも、多くのことを教えてくれます。

損失を出せば、「もっと慎重になろう」と学びます。でも、利益を逃せば、「自分の投資スタイルとは何か」を深く考える機会を得られるのです。

この金投資の失敗があったからこそ、私は自分の投資哲学をより明確にできました。「配当を生む資産に投資する」という軸を、より強固にできたのです。

もし金投資が成功していたら、私は今頃、「次はプラチナか」「ビットコインはどうか」と、自分のスタイルとは異なる投資に手を出していたかもしれません。

つまり、この「失敗」は、私を本来の投資スタイルに引き戻してくれたのです。

この失敗から学んだこと

金投資の失敗から、私は3つの重要な教訓を得ました。

教訓1:合わない投資は、利益が出ても続けられない

投資には、様々なスタイルがあります。短期トレード、成長株投資、バリュー投資、インカム投資――どれが正解ということはありません。

重要なのは、「自分に合っているか」です。

私の場合、インカム投資が性に合っていました。定期的なキャッシュフローを得ることで、安心感を感じられる。それが私の投資スタイルです。

逆に、金のような「値上がり益だけを狙う投資」は、私には合いませんでした。たとえ大きな利益が出たとしても、精神的なストレスに耐えられなかったでしょう。

もし無理に金投資を続けていたら、どこかで必ず失敗していたはずです。なぜなら、「なぜこの投資をしているのか」という根本的な理由が曖昧だからです。

合わない投資で一時的に成功しても、それは再現性がありません。次の投資判断で失敗する可能性が高いのです。

教訓2:正解だったかどうかより「再現性」を重視

投資において、「正解」を求めすぎるのは危険です。

金投資は、結果的には「正解」でした。保有し続けていれば、大きな利益が得られたからです。でも、私にとって重要なのは、「次も同じ判断ができるか」という再現性です。

金投資の成功は、私にとって再現性がありませんでした。なぜなら、売却タイミングの基準が明確でなかったからです。

一方、高配当株投資には再現性があります。「配当利回り○%以上」「連続増配○年以上」といった基準で銘柄を選び、「配当が維持される限り保有する」というルールで運用できます。

この「再現性」こそが、長期的な投資成功の鍵なのです。

たとえ一度や二度、大きな利益を逃したとしても、再現性のある投資スタイルを持っていれば、長期的には必ず成功します。

教訓3:投資の成功は、お金だけで測れない

最後に、そして最も重要な教訓は、「投資の成功は、リターンだけでは測れない」ということです。

確かに、金投資で200万円以上の利益を逃しました。でも、私は以下のものを手に入れました:

  • 精神的な安定
  • 自分の投資スタイルへの確信
  • 「合わない投資」を見極める力
  • 長期的な投資哲学

これらは、お金に換算できない価値があります。

投資において、「いくら儲けたか」だけを追求すると、必ず行き詰まります。なぜなら、上には上がいるからです。どれだけ儲けても、「もっと儲けた人」と比較して不満を感じてしまいます。

むしろ、「自分らしい投資ができているか」「安心して続けられているか」「生活が豊かになっているか」――こうした視点で投資を評価すべきです。

その観点から見れば、金投資から撤退した判断は、間違っていなかったと言えます。

おわりに|金投資を否定しないが、自分は距離を取る

この記事を読んで、「金投資はダメだ」と受け取らないでください。

金投資は、多くの人にとって有効な選択肢です。実際、この5年間で金に投資した人は、大きなリターンを得ています。それは素晴らしい成果です。

また、ポートフォリオの一部として金を保有することは、リスク分散の観点から理にかなっています。株式市場が調整局面を迎えたとき、金が下支えになることもあります。

私が言いたいのは、「金投資は自分には合わなかった」ということだけです。

投資において最も重要なのは、「自分を知ること」です。

自分は何のために投資をしているのか。 どんな投資スタイルなら、安心して続けられるのか。 どんなリスクなら、受け入れられるのか。

これらの問いに、明確に答えられる人は、長期的に成功します。

私の場合、その答えは「配当を生む資産への投資」でした。金は、その答えとは異なる選択肢だったのです。

もしあなたが今、「あの投資をしておけばよかった」と後悔しているなら、一度立ち止まって考えてみてください。

その投資は、本当にあなたに合っていたでしょうか。 仮に成功していたとして、それは再現性のある成功だったでしょうか。 そして、その投資を続けることで、あなたは安心して眠れたでしょうか。

投資の成功は、リターンだけでは測れません。「自分らしい投資」を見つけ、それを長く続けることこそが、真の成功なのです。

金投資という「絶好の機会」を逃した私の失敗談が、あなたの投資哲学を考えるきっかけになれば幸いです。

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